読んだもの

天才投手 藤原審爾
かなりコミカルな野球小説。ただし、唯我独尊というか純朴無頼というかな田舎者主人公による一人称視点で、主人公の思想思考語り口の面白さなために、少々取っつきにくいところはあると思います。
この主人公野球嫌いを標榜している割に、随分と野球に詳しくまた勉強熱心なところもあって、単純かと思いきや案外複雑?いや単純といったところ。
ちなみにon時代が舞台です。

富田常雄
明治頃を舞台にした柔術小説…なんだけど、恋愛系の話が多くて魅力的な登場人物たちを少々生かし切れてなかったかなと思いました。
男女の機微のようなところでは各組合わせが絡み合いながら書けていると思うのだけれど、いかんせんこの小説の導入部で柔術にのめり込んでいくひ弱な書生に引き込まれちゃった者としては、期待はずれな展開でした。
それでも端々に登場する柔に関わる人物たちはとても魅力的で、長編ながら一息に読めてしまう面白さでした。でもやっぱり惜しい。

スローカーブをもう一球 山際淳司
スポーツに関するノンフィクション短編集。
日本が不参加を決めたモスクワオリンピックに関わる選手たちの話は、悲劇的に書いているわけではないけれど感ずるところはあります。
表題作では、高校球児に似つかわしくない人物が打者心理につけ込んだ投球術で勝ち上がっていく姿が痛快。