氷と炎の歌

米国の戦記っぽいファンタジー小説です。
米国では全7部予定で現在は4部まで刊行されていて、日本では3部までが翻訳されています。
文庫で出ていたシリーズ1作目『七王国の玉座』を読み終わった翌日には、本屋に走って、既刊ハードカバーを全て揃えてしまいました。
何故そんなに急いだかといえば、このシリーズは主人公を設定せずにその章(章のタイトルが全て人物名)ごとの人物の視点で物語が進み、伏線を広げたり拾ったりしながら、切れ目なく物語が続いていきます。
そのため、1部を読んだところでは物語のほんの触りしか語られておらず、然程引き込まれるような面白さを感じていなかったにも関わらず、続きだけは気になって仕方がなくなったわけです。1部ラストのヒキの上手さが反則級だったこともありますけどね。
勿論、3部まで読み終わった今では、どっぷりと物語に引き込まれてしまって、余韻だけでしばらく楽しめそうな勢いです。


大まかな内容ですが、基本的には戦記といっていい形を取っていると思いますが、戦場の描写というのは意外と少なめです。
また、皮肉なことに戦場に駆り出されてそれを多く描写されているのは、発育不良で人から小人と嘲られている、戦場に最も似つかわしくない青年だったりします。
多くの章では、放浪や王宮や僻地で生き延びるキャラクターが描写されていて、それぞれが周囲に振り回され続ける立場にいるために、最善といえる行動が出来なかったり、最善と思えた行動が他人の陰謀に基づいたものだったりと、なかなか上手く運びません。
さらには、それを個人技で突破できるようなキャラクター、つまるところヒーローが一人もいません。
というのは言い過ぎで、一人だけいるにはいるんですが、今のところ七王国外にいて自分の力(戦力や統治力)を蓄えている段階で、まだ七王国の戦乱には関わっていません。
そのため本作では、ファンタジーらしく魔法と言い換えられるような神秘があったり、ドラゴンや異形人やリビングデッドが登場したりもするんですが、それを踏まえても、ただただキャラクターたちの目を通して七王国の戦乱や謎を追いかけていくような構成になっています。


第3部で一応シリーズ前半の区切りが付いていて、1部で謎となっていた出来事は、読者に対して、ほぼ回答が示されています。
その点は良かった、本当に良かった、もっと気になることが山のようにあるけど!
日本で第4部が翻訳される時期は、早くて来年末といったところでしょうか。
下手すれば……いやしなくとも10年近い付き合いになる予感がするので、気長に翻訳を待たないと仕方がないんですけどね。